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2010-05-31

複雑な現実世界の事象を自由に観ているときの感情的記憶の形成にたいする神経系

Component Neural Systems for the Creation of Emotional Memories during Free Viewing of a Complex, Real-World Event.
Front Hum Neurosci. 2010;4:34
Authors: Botzung A, Labar KS, Kragel P, Miles A, Rubin DC

複雑で自己に関連した感情的記憶に形成に寄与する神経システムを検討するため,バスケのファンが試合を観ているときにfMRIを測定した。続く再認記憶課題では,直前に観た,もしくは観たことないゲームのプレイクリップが提示された。観たことがあるかないかの判断のあと,その感情価と強度を評価。データ駆動型の解析が用いられ,空間的独立成分に分離された模様。独立成分と再認成功したクリップの感情評価レートの相関が算出されている。海馬や扁桃体などを含む側頭領域,及び内側の前頭-帯状-頭頂ネットワークが相関を示した。この内側面のネットワークは社会認知や自己関連処理に寄与している。やはり自己に強く結びつくものは記憶に残りやすい,逆も言えるか。

2010-05-28

条件づけられた協力の神経基盤

Neural basis of conditional cooperation.
Soc Cogn Affect Neurosci. 2010 May 25;
Authors: Suzuki S, Niki K, Fujisaki S, Akiyama E

遺伝的に関係のない他者との協力は社会の基盤であるが,生物学的にも社会学的にもなぞであったと。心理実験では,協力も条件づけられることが示されているらしい。囚人のジレンマゲームで協力的,中立的,非協力的な対戦相手との交互作用をfMRIで検討した模様。結果としては,非協力的な相手よりも,中立・協力的な相手の場合でより協力行動をとり,認知的抑制に関わる領域(右DLPFC)は非協力的な相手の場合に特に高まっている。非協力的な人と協力しようとする動機づけの認知的抑制は条件づけられた行動を駆動するのではとのご考察も,アブストだけではよくわからず。

2010-05-27

社会的排斥の神経処理における年齢とMAOA遺伝子型の影響

Effects of age and MAOA genotype on the neural processing of social rejection.
Genes Brain Behav. 2010 May 18;
Authors: Sebastian CL, Roiser JP, Tan GC, Viding E, Wood NW, Blakemore SJ

青年期は排斥に敏感。先行研究で,社会的排斥に反応する社会情動的な脳領域と青年期において発達する領域のオーバーラップが示唆されている。で,この青年期で発達する領域ってのはMAOAによって影響を受けるらしい。排斥に関連した感情ストループ課題を14-16歳の群と23-28の群で比較しましたと。青年期群は排斥刺激に対して,成人群とは異なるパターンを示した模様。違いは右腹外側前頭前野とかで,これは制御領域。年齢と遺伝子型の交互作用が扁桃体でも認められている。大人では遺伝子型の影響があるけど,青年期ではなし。ストループではなくてダイレクトに排斥したときの反応のデータ渇望。

2010-05-26

島と小脳における局所的同質性の低下: 大うつ病患者とうつ病リスクの高い被験者における安静時fMRI研究

Decreased regional homogeneity in insula and cerebellum: A resting-state fMRI study in patients with major depression and subjects at high risk for major depression.
Psychiatry Res. 2010 May 19;
Authors: Liu Z, Xu C, Xu Y, Wang Y, Zhao B, Lv Y, Cao X, Zhang K, Du C

遺伝的にうつ病リスクの高い人まで含めてrsfMRIを検討している。解析としてはregional homogeneity (ReHo)を使用。統制群と比べて,うつ病患者とうつ病リスクの高い人は右島と左小脳におけるReHoが有意に低下していた模様。この辺の異常が,うつの病態生理学になんらかの関連をもっているのではとのご考察。

2010-05-24

ヒト手網における負の報酬予測誤差に対するBOLD反応

BOLD Responses to Negative Reward Prediction Errors in Human Habenula.
Front Hum Neurosci. 2010;4:36
Authors: Salas R, Baldwin P, de Biasi M, Montague PR

手綱ってはじめて聞いた。
「手綱は視床髄条の後方への延長部であって、索状の白質で左右より松果体に連なると共に一部は松果体の前で交叉し、手綱交連を作る。またその後外側端は三角形状に広くなって手綱三角を形成する。そのなかに内側および外側手綱核がある。内側核は小細胞性で、外側核は大小の細胞を含む。視床髄条の線維はこれらの核は手綱の線維を受け、主として脚間核に向かう反屈束または手綱脚間路をだす。これらはすべて嗅覚に関係する構造である。」らしい。
動物ではいろいろと示唆がえられていたらしい。ヒトではちっさすぎて普通のfMRI研究では引っかからないけど,工夫してやってみた模様。しかして,タイトルのごとくなりましたと。

2010-05-21

孤独の科学---人はなぜ寂しくなるのか

ジョン・T・カシオポ,ウィリアム・パトリック

いろいろと勉強になるが,読むのがつらい。
主に目が疲れる的な意味で。歳かな。

2010-05-20

大うつ病における神経優位性の検討:安静時fMRIデータの多変量グランジャー因果性解析

Investigating neural primacy in Major Depressive Disorder: multivariate Granger causality analysis of resting-state fMRI time-series data.
Mol Psychiatry. 2010 May 18;
Authors: Hamilton JP, Chen G, Thomason ME, Schwartz ME, Gotlib IH

グランジャー因果性解析に多変量バージョンがあることを知る。うつ病では海馬活動がvACCの活動を予測することが示されている。またうつ病ではMPFCとvACCは相互に活動を増強させる模様。やっぱりうつ病では安静時から脳活動パターンが変化していて,著者たちはドーパミン系の障害と解釈しているけど,そこまでいうのは主張しすぎな気もする。

2010-05-19

睡眠圧の増加は安静時の機能的結合を低下させる

Increased sleep pressure reduces resting state functional connectivity.
MAGMA. 2010 May 15;
Authors: Sämann PG, Tully C, Spoormaker VI, Wetter TC, Holsboer F, Wehrle R, Czisch M

これは分かりやすいタイトル。部分的睡眠剥奪のあとにrsfMRIを測定。解析はICAとクロス相関でDMNとそのACN(anti-correlation network)が対象。DMNは睡眠剥奪によって結合性が低下していた。DMNとACNのクロス相関も低下。こういった結合性の低下が睡眠剥奪後の知覚的・認知的変化の基礎となっているかもと至極まっとうな考察。

一番気になるのは雑誌名。

2010-05-18

心理測定尺度における心理過程の脳写像:社会神経科学におけるfMRI手法

Brain Mapping of Psychological Processes with Psychometric Scales: An fMRI Method for Social Neuroscience.
Neuroimage. 2010 May 13;
Authors: Dimoka A

タイトルだけだとなんのこっちゃわからんけど,要するに質問紙に答えているときにfMRIをとるということらしい。実際の心理尺度の高低で分けて比較すると結構な差が出てきている。しかし解釈はどうするのか。タスクに落とし込めるやるはこれでやる必要はないので,テーマ次第か。

2010-05-17

線条体ドーパミンは動機づけと認知的制御間の接合を調整する:遺伝的イメージングの知見

Striatal Dopamine Mediates the Interface between Motivational and Cognitive Control in Humans: Evidence from Genetic Imaging.
Neuropsychopharmacology. 2010 May 12;
Authors: Aarts E, Roelofs A, Franke B, Rijpkema M, Fernández G, Helmich RC, Cools R

遺伝子の知識がないとまずいと痛感。

2010-05-13

強化学習モデルとグランジャー因果性モデルを使った、視覚カテゴリー学習に対する独立した皮質-線条体システムの寄与の分離

Dissociating the contributions of independent corticostriatal systems to visual categorization learning through the use of reinforcement learning modeling and Granger causality modeling.
Neuroimage. 2010 Apr 1;50(2):644-56
Authors: Seger CA, Peterson EJ, Cincotta CM, Lopez-Paniagua D, Anderson CW

いいたいことはわかるが、タイトルがながい。
この論文では、学習における4つの皮質-線条体ループの寄与を分離している。
運動(putamen and motor cortex)
視覚(posterior caudate and visual cortex)
実行系(anterior caudate and prefrontal cortex)
動機づけ(ventral striatum and ventromedial frontal cortex)
参加者は、刺激を曖昧な二つのカテゴリーに分離し、試行錯誤で学習を行った。正しいカテゴリー化、学習、フィードバックの正誤にそれぞれ反応する領域を検出し、次に予測誤差と報酬予測を強化学習モデルにより分離した。さらにそれらの領域をグランジャー因果性モデルにより解析した。運動と視覚ループはカテゴリー化能力の獲得に関連していた。視覚野から尾状核へダイレクトな影響が認められたが、被殻は運動野から影響を受けていた。動機づけと実行系のループはフィードバック処理に関連していた。しかし、動機づけループは予測誤差を反映し、実行系は報酬予測を反映していた。きれいに分離できていてすごい気がする。グランジャー因果モデルを勉強する必要がありそう。

2010-05-12

fMRIにおけるICAの結果の再現性効果: 実際の、及びシミュレートされた安静状態の影響に関する研究

Effects of repeatability measures on results of fMRI sICA: A study on simulated and real resting-state effects.
Neuroimage. 2010 May 5;
Authors: Remes JJ, Starck T, Nikkinen J, Ollila E, Beckmann CF, Tervonen O, Kiviniemi V, Silven O

ICAはfMRIにおけるデータ駆動型の解析手法。ICAは反復評価アルゴリズムに基づいていて、ノイズによる精度に関して懸念がある。ICASSO, RAICAR, ARABICAなどの再現性測度が救済案として紹介されているが、その評価は限られている。そこで、この研究では再現性解析が必要かどうか検討している。通常のFastICAと再現性アプローチを比較している。再現性測度によってまあまあの改善が認められた模様。詳細は難しすぎてわからなかったけど、ICAはまだまだ進化の余地があるらしい。

2010-05-11

外側前頭前野と間隔選択における自己制御

Lateral prefrontal cortex and self-control in intertemporal choice.
Nat Neurosci. 2010 May;13(5):538-9
Authors: Figner B, Knoch D, Johnson EJ, Krosch AR, Lisanby SH, Fehr E, Weber EU

右ではなく,左の外側前頭前野の機能をrTMSによって一時的に麻痺させると,長期大報酬より短期小報酬を選択する割合が増える。着実な研究できれいなデータと思うけど,あまり目新しくない気はする。

2010-05-10

報酬,依存,感情制御システムは恋愛における拒絶と関連する

Reward, Addiction and Emotion Regulation Systems Associated with Rejection in Love.
J Neurophysiol. 2010 May 5;
Authors: Fisher HE, Brown LL, Aron A, Strong G, Mashek D

恋愛における拒絶は,喪失感とネガティブ感情を引き起こす。うつや自殺の原因となることもある。この研究ではパートナーからふられたけど,まだ恋愛感情を相手にもっている15名を対象にfMRIをとっている。参加者は元恋人,家族,魅力的な他者の写真をみて,その際の脳活動が測定された。元恋人の見ているときに特有の反応は,ventral tegmental area (VTA) bilaterally, ventral striatum, medial and lateral orbitofrontal/prefrontal cortex, and cingulate gyrusであった。VTAは恋愛における情熱と関連していた。こういった知見はコカイン中毒の脳活動と似ているらしい。恋は麻薬というのを脳機能から暗示した研究かもね。

2010-05-07

安静状態と課題誘発非活動: 統合失調症患者と健常者における方法論的比較

Resting state and task-induced deactivation: A methodological comparison in patients with schizophrenia and healthy controls.
Hum Brain Mapp. 2010 Mar;31(3):424-37
Authors: Mannell MV, Franco AR, Calhoun VD, Cañive JM, Thoma RJ, Mayer AR

デフォルトモードネットワークの方法論を比較。まってました。賦活課題におけるブロック間休憩を用いる方法と,安静状態で測定してICAなどに掛ける方法,シードベースの相関解析を比較している。すべての解析でACC,PCC,外側頭頂皮質を含むネットワークが同定されてている。デフォルトモードのレベルではどの解析でも検出できる模様。見ているものが違うのでどちらが敏感とかまでは難しいか。

2010-05-06

痛みの予測と無痛症: 有害刺激に対する側坐核の反応は慢性的苦痛の有無において変わる

Predicting value of pain and analgesia: nucleus accumbens response to noxious stimuli changes in the presence of chronic pain.
Neuron. 2010 Apr 15;66(1):149-60
Authors: Baliki MN, Geha PY, Fields HL, Apkarian AV

急激な温熱刺激に対する反応を、慢性的背中痛患者と健常者で比較。痛み知覚と関連した皮質活動は同じようなパターンを示す。しかし、側坐核の活動は異なった模様。健常者では側坐核の活動は痛みの軽減を予測したが、患者では逆になっている。これを著者らは急激な痛みが背中痛を軽減したためと解釈している。これは心理物理的実験でも確認された模様。そのため、側坐核は慢性疼痛における鎮痛的な可能性を予期しているのかもしれないと主張している。鎮痛作用の予期が報酬として機能しているのか、側坐核の活動そのものが鎮痛作用をもたらしいているのかちょっとわからず。