ページ

2010-04-30

食べ物画像の処理:空腹、性別、カロリーの影響

Processing of Food Pictures: Influence of Hunger, Gender and Calorie Content.
Brain Res. 2010 Apr 24;
Authors: Frank S, Laharnar N, Kullmann S, Veit R, Canova C, Hegner YL, Fritsche A, Preissl H

糖尿病や慢性疾患の主要なリスクは過食である。この研究では食行動がどのような要因によって影響を受けるか検討している。参加者は12名で少なく感じる。暗黙的な1バックタスクが食物刺激提示に用いられている。空腹時と満腹時に日を明けて実験に参加。低カロリー刺激に比べて高カロリー刺激では報酬関連領域(OFCやInsula)がより賦活していた模様。さらに満腹は男女の食べ物画像処理で異なる影響を及ぼしていた。俗に言う女性の甘いものは別腹の機序解明のヒントになるかも。

2010-04-28

統合失調症における報酬経路の関与

The relevance of reward pathways for schizophrenia.
Curr Opin Psychiatry. 2010 Mar;23(2):91-6
Authors: Ziauddeen H, Murray GK

行動及び画像研究をまとめたレビュー。

2010-04-27

若年健常者の神経心理学的機能、個人特性、気分とセロトニン及びドーパミンの関連

Psychol Med. 2010 Apr 6:1-11. [Epub ahead of print]
Serotonin and dopamine transporters in relation to neuropsychological functioning, personality traits and mood in young adult healthy subjects.
Burke SM, van de Giessen E, de Win M, Schilt T, van Herk M, van den Brink W, Booij J.

188人の若年健常者を対象としている。神経伝達物質はSPECTで評価。セロトニンとドーパミンそれぞれと自記式の衝動性や気分には関連が認められていない。ドーパミンにしてもセロトニンにしても先行研究からの予測からことごとく外れたネガティブデータだが、人数が多いので努力賞?。

2010-04-26

社会不安障害の感情制御におけるマインドフルネスに基づいたストレス減弱の効果

Effects of mindfulness-based stress reduction (MBSR) on emotion regulation in social anxiety disorder.
Emotion. 2010 Feb;10(1):83-91
Authors: Goldin PR, Gross JJ

マインドフルネスによって不安症状とうつ症状は改善。治療後のfMRI評価では、呼吸に焦点づける注意課題時において扁桃体の活動は低下したのに対し、注意配分に関する領域の活動は増加。こうした脳機能的な変化が社会不安障害における回避行動、臨床症状、ネガティブな自己信念に対する自動的な感情反応の低減を促進したのかもと著者たちは指摘している。しかし、脳機能の変化が行動低減を促進するという表現はおかしい。この研究はあくまで関連を示しただけ。

2010-04-24

ネットワーク結合性は行動的に異なる前頭側頭型とアルツハイマー型認知症において異なる

Divergent network connectivity changes in behavioural variant frontotemporal dementia and Alzheimer's disease.
Brain. 2010 Apr 21;
Authors: Zhou J, Greicius MD, Gennatas ED, Growdon ME, Jang JY, Rabinovici GD, Kramer JH, Weiner M, Miller BL, Seeley WW

安静時じゃなくて課題間の休憩を利用して解析しているデータ。アルツハイマーでは前頭側頭型に比べて、デフォルトモードネットワークと海馬などの結合性が低下する模様。なんか納得の結果。

2010-04-23

安静時fMRIデータの解析と解釈における進歩と落とし穴

Advances and pitfalls in the analysis and interpretation of resting-state FMRI data.
Front Syst Neurosci. 2010;4:8
Authors: Cole DM, Smith SM, Beckmann CF

主にシードベースの相関解析とICAに関して、いろいろと議論されている。いずれにしろ脳機能の複雑性を捉え記述するには、技術的な最適化がまだまだ必要だねと至極全うなご指摘。

2010-04-16

海外出張

1週間ほどカナダへ行ってきます。
暇つぶしのお供は東野圭吾を2冊、PSP、数独。

2010-04-15

子供のデフォルトモードネットワークにおける機能的・構造的結合性の発達

Supekar K, Uddin LQ, Prater K, Amin H, Greicius MD, Menon V
Development of functional and structural connectivity within the default mode network in young children.
Neuroimage. 2010 Apr 9;

機能的にも構造的にもDMNの成熟が自己関連や社会的認知の機能に重要な役割を果たしていることがうかがえる。

2010-04-14

覚醒中の動物における安静時脳ネットワーク写像

Mapping Resting-State Brain Networks in Conscious Animals.
J Neurosci Methods. 2010 Apr 8;
Authors: Zhang N, Rane P, Huang W, Liang Z, Kennedy D, Frazier JA, King J

ラットで安静時fMRIをやった研究。
これだけではあまり意味がないので、今後薬理学的な操作とかヒト対照ではできない実験をやっていくのでしょう。

2010-04-13

意志決定研究における脳イメージング技術とその応用

Brain Imaging Techniques and Their Applications in Decision-Making Research.
Xin Li Xue Bao. 2010 Feb 3;42(1):120-137
Authors: Xue G, Chen C, Lu ZL, Dong Q

意志決定研究の今後の方向性と問題に関していろいろと議論されている。
一つは、イメージング研究と損傷研究との合わせ技が必要。これはイメージングは賦活領域を示してくれるけど、必ずしもその領域が課題遂行に必要ではないことがあるから。ストループ課題ではACCが賦活するけど、ACC損傷患者ではストループ課題遂行が障害されないことが報告されている。
二つ目は、逆転推測の問題。“課題Aで領域Zが賦活する→領域Zは課題Aに関連すると結論”これは典型的な推測。“領域Zは課題Xで賦活し、以前の研究において領域Zは課題Aに関連することが示されている→課題Xは認知過程Aを含むと結論”。この逆転推測は“領域Zが認知過程Aだけに関連する”という仮定によって保証される。が、そんな保証はどこにもない。著者らはこの問題の解決にパターン解析が使えるのではないかと主張している。
三つ目は、実験状況と日常場面における乖離。実験上の制約をみたしつつ、より現実場面に近い実験パラダイムが必要。
四つ目は、精度の向上。
これらのことが意志決定に関する神経経済学に求められる。
一つ目と二つ目に関してはテーマに関係なくイメージング研究全般にいえる。

2010-04-12

共感の感情的、認知的側面とその社会的認知との関連--fMRI研究

Brain Res. 2010 Jan 22;1311:110-20. Epub 2009 Nov 26.
Emotional and cognitive aspects of empathy and their relation to social cognition--an fMRI-study.
Krämer UM, Mohammadi B, Doñamayor N, Samii A, Münte TF.

仮説:観察された他者の感情は、観察者の感情状態の中に関連した表象を自動的に賦活させる。これを観察者の感情状態を操作してfMRIで検討している。共感に関連してVMPFC,VLPFC,STSが賦活。MPFCの活動は苦悩感情の感じやすさと負の相関。タイトルの意図がよくつかめず。

2010-04-09

島における共感の脳反応は自閉症でなく無感情症によって影響される

Empathic brain responses in insula are modulated by levels of alexithymia but not autism.
Bird G, Silani G, Brindley R, White S, Frith U, Singer T.
Brain. 2010 Apr 5. [Epub ahead of print]

自閉症傾向の高低x無感情症の高低のデザインで痛みに対する共感時の脳活動をfMRIで測定。
左の島前部が賦活し、その活動は無感情症の程度と相関。自閉症における共感能力の障害は無感情症の程度に大きく依存しているらしい。

2010-04-08

うつにおける悲観的な態度の神経相関

Psychol Med. 2010 May;40(5):789-800. Epub 2009 Sep 7.
Neural correlates of 'pessimistic' attitude in depression.
Herwig U, Brühl AB, Kaffenberger T, Baumgartner T, Boeker H, Jäncke L.

情動予期課題を使ったfMRI研究。内容はともかく、U氏の論文も私の論文も引用してもらえていない。なにかものすごく壁を感じる。我々のグループの論文は価値がないと判断されたのか、それ以外の要因か。悔しいの一言。

2010-04-07

ヒト眼窩前頭-線条体の機能的結合は行動的な固執を調節している

Neuroreport. 2010 Mar 30. [Epub ahead of print]
Human orbitofrontal-striatum functional connectivity modulates behavioral persistence.
Jung YC, Ku J, Namkoong K, Lee W, Kim SI, Kim JJ.

個人が不確定な条件下で行動的戦略をどの程度維持するかを脳機能から検討した論文。眼窩前頭野と側坐核の機能的結合の強度は、意志決定課題における固執反応数と相関していた模様。著者らは腹側線条体に対する眼窩前頭野のトップダウン制御が不確定条件下の意志決定における個人差の基盤になっていると主張している。

2010-04-06

安静時ネットワークは臨床的に分離された症状で変化する

Brain. 2010 Mar 30. [Epub ahead of print]
Resting state networks change in clinically isolated syndrome.
Roosendaal SD, Schoonheim MM, Hulst HE, Sanz-Arigita EJ, Smith SM, Geurts JJ, Barkhof F.

安静時に使われているエネルギーより、課題によって引き起こされる代謝的変化は相対的に小さいので、安静時データはいろんな情報もってるじゃろーって前提でrsfMRIやっている。
動脈硬化症の人と健常者のデータに対してICAを適用し比較。患者群では8つのうち6つのネットワークにおいて健常と比較してよりシンクロしていた。著者は皮質の再構成?は動脈硬化における初期症状であるといっている。再構成ってなんぞな。

2010-04-05

エピソディックな決定における線条体反応の機能有意性: 回復か目標到達か?

J Neurosci. 2010 Mar 31;30(13):4767-75.
Functional significance of striatal responses during episodic decisions: recovery or goal attainment?
Han S, Huettel SA, Raposo A, Adcock RA, Dobbins IG.

タイトルだけだと意味がよくわからず。
記憶想起は典型的な目標指向的行動で、強化や動機づけプロセスによって影響を受ける。線条体活動は記憶想起中において顕現するが、その機能は未だ不明。なぜなら典型的な記憶パラダイムは動機づけをコントロールしていないから。この研究では、パフォーマンスにリンクした金銭的報酬の有り無しで再認中の線条体活動をfMRIで測定している。インセンティブなしでは古い記憶に対する背側線条体活動が新しいものよりも大きかった。それに対して、潜在的に報酬が得られるかどうか、またフィードバックがあるかどうかに関係なく、線条体の活動は認められた模様。この結果は再認課題中における線条体活動は金銭的報酬を受けるかどうか、認知的なフィードバックがあるかどうかには関係なく、目標に到達できたかどうかに協力に依存していると著者らは主張している。

2010-04-02

脳梗塞後の運動実行ネットワークの力動的機能再構成

Brain. 2010 Mar 30. [Epub ahead of print]
Dynamic functional reorganization of the motor execution network after stroke.
Wang L, Yu C, Chen H, Qin W, He Y, Fan F, Zhang Y, Wang M, Li K, Zang Y, Woodward TS, Zhu C.

またしてもやりたいことを先越されるの巻。
10人の脳梗塞患者を対象に1年5回に渡って安静時fMRIが撮像されている。各患者の運動実行ネットワークをグラフ理論(スモールワールドネットワークのやつね)で解析している。回復過程において、このネットワークのランダムモードに徐々にシフトする結果となっている(なんか予想とは逆だなー)。大事なことは、ネットワークの指標が臨床的尺度と相関していることでしょう。この研究は脳梗塞後の脳の変化を明らかにするとともに、新たな手法を提供したといえるかな。

2010-04-01

自尊心は社会的フィードバックに対するMPFCの反応を調節する

Cereb Cortex. 2010 Mar 29. [Epub ahead of print]
Self-esteem Modulates Medial Prefrontal Cortical Responses to Evaluative Social Feedback.
Somerville LH, Kelley WM, Heatherton TF.

参加者は社会的評価課題において(表面上は)同僚からフィードバックを受けている。低自尊心者はポジティブな社会的フィードバックに対してvACCとMPFCの活動が高まっていた。反対に高自尊心者はこれらの領域はポジティブフィードバックに対しては敏感でなかった。著者は、vACC/MPFCは社会的フィードバックの顕著性を表象し、相対的な社会的立場の知覚を形成するプロセスに関与するといっている。なんのこっちゃ。

低自尊心者は自分に自信がないからほめられるとその不一致から自己関連処理が促進され、これにvACC/MPFCが関与していると考えた方が自然な気もする。
自分の研究を引用してくれたのは感謝。

不公平? 社会的文脈における公平性の神経相関

Soc Cogn Affect Neurosci. 2010 Mar 28. [Epub ahead of print]
Unfair? It depends: Neural correlates of fairness in social context.
Güroglu B, van den Bos W, Rombouts SA, Crone EA.

提案者が他の選択をもたないときの不公平な申し出を拒絶するときには、より公平な提案を相手がもっているのに不公平な選択を受け入れたときと同様に、DMPFCとInsulaを含むネットワークが賦活していた。これは規範の破壊に対する神経反応と解釈される。
さらに、不公平な申し出に対する拒絶では、MPFC前部とTPJが賦活していた。これらの領域の賦活は道徳的なメンタライジング(相手の意図を読む的な)が社会的判断において必要とされるためと解釈されている。
不公平性に関連した社会的判断では相手の意図を考慮するプロセスが伴うことを脳活動から示した知見。

社会的認知とモラル判断におけるヒト前頭前野の役割

Annu Rev Neurosci. 2010 Mar 29. [Epub ahead of print]
The Role of the Human Prefrontal Cortex in Social Cognition and Moral Judgment.
Forbes CE, Grafman J.

fMRI研究は規範やモラルを必須とする複雑な社会に適応するためにはPFCは非常に重要であることを示してきた。このレビューではPFCが明示的あるいは暗示的な社会的認知やモラル判断にPFCの各領域がどのように関わるか検討している。著者らは社会的認知における明示的及び暗示的なプロセスは濃密に交互作用していると主張している。
さもありなん。

健常及び病理的脳ネットワークにおける構造及び機能的結合MRIのグラフ理論的解析

MAGMA. 2010 Mar 27. [Epub ahead of print]
Graph theoretical analysis of structural and functional connectivity MRI in normal and pathological brain networks.
Guye M, Bettus G, Bartolomei F, Cozzone PJ.

脳がスモールワールド的な性質を持つことは既知であるが、これを利用して脳関連疾患における障害の予測に使えるかもしれないと主張している。
最近自分がやろうとしていることがことごとく先にやられている。
方向性は間違っていないと思うことにする。