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2010-03-31

社会神経科学における概念的挑戦と方向性

Neuron. 2010 Mar 25;65(6):752-767.
Conceptual Challenges and Directions for Social Neuroscience.
Adolphs R.

社会神経科学は精神医学から経済学まで広い領域に多大な寄与をしているが、まだまだ興味深いテーマがあふれている。
社会的な情報処理に関する領域は特異的かどうか?
個人差や文化の影響を受けるのかどうか?
ヒト固有の社会的認知機能があるのかどうか?
社会的脳とは何で、社会心理学的なプロセスをどのように脳に描くのか。
我々が何者で、どのように進化してきたのかを社会神経科学の知見をもとにレビューした論文。

2010-03-30

アパシーは前頭側頭型認知症における基底核萎縮とは関連しない

Am J Geriatr Psychiatry. 2009 Sep;17(9):819-21.
Apathy is not associated with basal ganglia atrophy in frontotemporal dementia.
Links KA, Chow TW, Binns M, Freedman M, Stuss DT, Scott CJ, Ramirez J, Black SE.

アパシーとは持続的な無気力、やる気のない状態のことを意味する。
認知症以外のアパシーには基底核が関連していることが知られている。
この研究では認知症のサブタイプである前頭側頭型認知症を対象に検討している。
基底核の体積はアパシーとなんも関連がなかったと報告している模様。
著者も指摘しているように、体積が変わらなくても、機能は落ちることがあるのでfMRIを使えよと思う。

2010-03-29

目標指向的な選択に関連した神経計算

Curr Opin Neurobiol. 2010 Mar 23. [Epub ahead of print]
Neural computations associated with goal-directed choice.
Rangel A, Hare T.

計算論モデル、ヒトfMRI、サル神経生理研究をレビューしている模様。
そのうち読まなきゃ的論文。

2010-03-26

異なる一次報酬の主観的好ましさに対する共通した神経スケール

Neuroimage. 2010 Mar 20. [Epub ahead of print]
A common neural scale for the subjective pleasantness of different primary rewards.
Grabenhorst F, D'Souza AA, Parris BA, Rolls ET, Passingham RE.

異なる価値をもつ標的の間で経済的決定が行われるとき、その価値は同じスケールでなければならない。
この研究では、fMRIを用いて二つの異なる報酬の主観的好ましさが同じ神経スケールで表象されている領域を探している。
刺激は味覚刺激と手への温熱刺激を用いている。
それらの刺激の主観的好ましさは共通してVPFCと相関していた模様。
この知見は異なる種類の報酬であってもその主観的好ましさを同じスケールで表象する神経ネットワークが存在することを示している。

2010-03-25

社会的及び符号的空間手がかりによる前頭頭頂の注意ネットワークの異なる活動

Soc Cogn Affect Neurosci. 2010 Mar 19. [Epub ahead of print]
Differential activation of frontoparietal attention networks by social and symbolic spatial cues.
Engell AD, Nummenmaa L, Oosterhof NN, Henson RN, Haxby JV, Calder AJ.

視線と矢印によって示された空間的定位の神経システムは異なるのではとの仮説を検証している。
不確実な矢印手がかりの場合には、確実な矢印手がかりの場合よりも腹側の注意ネットワークが賦活していた。
このような差異は視線手がかりでは認められなかった。
著者は、視線と矢印の手がかりによる目標検出の促進は異なる神経基盤によって補助されているかもといっている模様。

2010-03-24

共感と利他的動機づけの神経機序

Neuroimage. 2010 Mar 16. [Epub ahead of print]
Neural basis of extraordinary empathy and altruistic motivation.
Mathur VA, Harada T, Lipke T, Chiao JY.

アフリカ系米人とコーカソイド系米人を対象に、他者の苦痛を観察したときの脳活動をfMRIで記録。
ACCと両側島が他者の苦痛を観察すると賦活。
アフリカ系米人は自分の属する人種が苦痛を感じているさまを観察すると、さらにMPFCも賦活。

外集団よりも内集団のメンバーが苦痛を感じているときにおいてMPFCがより賦活することは、より強い共感と利他的な動機づけを意味するが、これは自己に関連した認知神経科学的なプロセスが内的な社会集団に対する共感や利他的動機づけの基礎になっていることを示している。

2010-03-23

青年期の外傷的脳損傷後における他者視点から観た自己に関する思考中の脳活動

Neuropsychology. 2010 Mar;24(2):139-47.
Brain activation while thinking about the self from another person's perspective after traumatic brain injury in adolescents.
Newsome MR, Scheibel RS, Hanten G, Chu Z, Steinberg JL, Hunter JV, Lu H, Vasquez AC, Li X, Lin X, Cook L, Levin HS.

タイトルくどし。
第三者視点の自己に関して思考するときには、外傷的脳損傷後では左角回、後帯状回、海馬傍回がより賦活していた。
著者らは、社会的認知に関わる前頭-頭頂ネットワークが障害されたために、補償的な神経ネットワークが見出されてのでは?といってる。
いまいちすっきりはしない。

2010-03-20

実験的脳梗塞後の感覚運動機能の回復は休息状態における半球内機能結合性の回復と関連している

J Neurosci. 2010 Mar 17;30(11):3964-3972.
Recovery of Sensorimotor Function after Experimental Stroke Correlates with Restoration of Resting-State Interhemispheric Functional Connectivity.
van Meer MP, van der Marel K, Wang K, Otte WM, El Bouazati S, Roeling TA, Viergever MA, Berkelbach van der Sprenkel JW, Dijkhuizen RM.

ラットにおけるfMRI研究。
実験的に脳梗塞を起こして、回復過程における機能的結合を評価した模様。
結果はタイトルの通り。
本文読めてないので、結合性にどんな指標を使ったかまでわからず。

2010-03-19

なぜ好かれると好きになるのか?

Soc Neurosci. 2010 Mar 12:1-9. [Epub ahead of print]
Why do I like you when you behave like me? Neural mechanisms mediating positive consequences of observing someone being imitated.
Kuhn S, Muller BC, van Baaren RB, Wietzker A, Dijksterhuis A, Brass M.

カメレオン効果をfMRIで検討している。
模倣をみると、感情及び報酬処理に関連した脳領域(mOFC,vmPFC)が賦活。
これらの領域は線条体や島と有意な結合性を示した。

自分の解析スタイルと一緒なので、これを読んで私の報酬系も賦活。

スモールワールドネットワークメモ

グラフ理論を脳活動の時系列データに応用すると、脳もスモールネットワーク的な性質を持つことが示される。
グラフ理論では、ネットワークをその要素(ノード)の集合とそのノードを相互結合している結合(エッジ)によって構成する。
ボクセルやROIがノード、それらの有意な相関がエッジとなる。
スモールワールドネットワークは高いクラスタリング性とノード間の平均距離が短いことに特徴がある。

解析の基本的な流れ
1.ノードごとの時系列データをSPM等で抽出
2.ノイズ除去のため、バンドバスフィルタを適用
3.各ノード対ごとに相関係数を算出
4.相関係数が基準値以上のものをエッジと決定
5.こうして作成されたネットワークからクラスタリング係数や最小パス長などを算出
6.これらの指標をランダムネットワークの同指標によって標準化
7.このクラスタリング係数の比を最小パス長の比で割った値がスモールワールド性σ
8.基準値を変更して4~7を繰り返し

クラスタリング係数
ある特定のノードに結合しているノード同士の結合率。
そのノード同士の実際のエッジ数をその最大エッジ数で割った値。
この値が高いほど、脳はよりクラスリングされていることになる。
この指標はランダムネットワークよりもスモールワールドネットワークで高くなる。

最小パス長
ノード間の最小パス長は、あるノードから別なノードまで何ステップで到達できるかを表している。
少ないほどネットワークとして効率的である。
この指標はランダムネットワークとスモールネットワークで差がない。

べき乗法則スケーリング
またスモールワールドネットワークの特徴としてべき乗法則スケーリングがある。
これは多くのノードは少ないエッジをもつが、ハブノードとよばれる数少ないノードが大きな数のエッジをもっていることを示す。
ランダムネットワークはノードは平均的なエッジをもつ。

これらのスモールワールド性の指標は、統合失調症などの疾患や神経伝達物質の操作によって低下することが報告されている。

2010-03-18

OFCにおける報酬予期の神経コード

Proc Natl Acad Sci U S A. 2010 Mar 15. [Epub ahead of print]
The neural code of reward anticipation in human orbitofrontal cortex.
Kahnt T, Heinzle J, Park SQ, Haynes JD.

multivariate pattern classificationを使った研究。
OFCにおける価値表象は予期されたものか、実際に得られたものかどうかに依存していないことを示している。

2010-03-17

食物報酬に対する脳反応の遺伝的差異

J Neurosci. 2010 Feb 17;30(7):2428-32.
Genetically determined differences in brain response to a primary food reward.
Felsted JA, Ren X, Chouinard-Decorte F, Small DM.

高カロリーなミルクシェークをみせたときの反応はTaqIA A1のタイプによって異なるらしい。
異なったのは中脳・視床・前頭眼窩野。
この遺伝子はドーパミンD2の受容体密度に関連しているらしい。

2010-03-16

衝動性の聴覚fMRI相関

Psychiatry Res. 2010 Feb 28;181(2):145-50. Epub 2010 Jan 18.
An auditory fMRI correlate of impulsivity.
Röhl M, Uppenkamp S.

ピンクノイズに対する脳反応が衝動性と相関するらしい。
理屈はよくわからず。

痛みの共感と感覚運動野γ帯域活動

J Neurosci. 2009 Oct 7;29(40):12384-92.
Synchronous with your feelings: sensorimotor {gamma} band and empathy for pain.
Betti V, Zappasodi F, Rossini PM, Aglioti SM, Tecchio F.

他人の痛みを観察すると、神経同期が増強し、観察社の感覚野と運動野のコヒーレンスは高まる模様。

甘味は鎮痛作用があるらしい

Neuroreport. 2010 Mar 8. [Epub ahead of print]
Sweet taste-induced analgesia: an fMRI study.
Kakeda T, Ogino Y, Moriya F, Saito S.

Vikingさんところで取り上げていたのでタイトルのみ。

2010-03-15

脱力発作を伴うナルコレプシーにおける報酬回路の異常活性

Ann Neurol. 2009 Aug 11;67(2):190-200. [Epub ahead of print]
Abnormal activity in reward brain circuits in human narcolepsy with cataplexy.
Ponz A, Khatami R, Poryazova R, Werth E, Boesiger P, Bassetti CL, Schwartz S.

タイトルまんま。
なんでナルコレプシーと報酬系が関連してくるのかアブストだけでは理解できず。

2010-03-12

確率的意志決定に伴う脳と自律神経系の関連

Neuroimage. 2010 Jan 1;49(1):1024-37. Epub 2009 Jul 30.
Brain and autonomic association accompanying stochastic decision-making.
Ohira H, Ichikawa N, Nomura M, Isowa T, Kimura K, Kanayama N, Fukuyama S, Shinoda J, Yamada J.

大平先生のところから。
前頭-基底核回路が意志決定の神経基盤を成しており、それに伴う自律神経系とも関連することを示した研究。
ソマティックマーカー仮説との絡みだと、fMRIでコネクティビティを評価していほしいと妄想が広がる。

報酬回路の神経活動は表情の魅力に対して非線形反応を示す

Soc Neurosci. 2010 Mar 10:1-15. [Epub ahead of print]
Neural activation in the "reward circuit" shows a nonlinear response to facial attractiveness.
Liang X, Zebrowitz LA, Zhang Y.

タイトルのまんま、線条体を含む報酬系は表情の魅力に対して非線形的に反応するらしい。
男女で差があって、男性の顔を見るときに女性の報酬系は線形的に反応するのに対して、男性は非線形的に反応するだと。
女性の写真を使った条件がないのは微妙だが、顔の評価は男性はデジタル的、女性がアナログ的なのは面白いかもしれない。

思春期における報酬への神経反応

J Am Acad Child Adolesc Psychiatry. 2010 Feb;49(2):162-172e5.
Healthy adolescents' neural response to reward: associations with puberty, positive affect, and depressive symptoms.
Forbes EE, Ryan ND, Phillips ML, Manuck SB, Worthman CM, Moyles DL, Tarr JA, Sciarrillo SR, Dahl RE.

思春期の子供では、成熟した個人のほうが、成熟の遅い個人より報酬に対するmPFC,STRの活動が大きい。
テストステロンは、線条体において男女で異なる相関を示している。
報酬関連の脳機能は性成熟と関連しているらしい。

2010-03-11

休息状態のfMRIデータが入手可能に

Proc Natl Acad Sci U S A. 2010 Feb 22. [Epub ahead of print]
Toward discovery science of human brain function.
Biswal et al.

レスティングステートfMRIのデータセットがダウンロードできるようになった模様。
世界中の研究期間から提供されたr-fMRIが年齢、性別の情報とともに得られる。
URLはhttp://www.nitrc.org/projects/fcon_1000/

2010-03-10

脳波トポの関連したBOLDは休息状態のネットワークを明らかにする

Neuroimage. 2010 Feb 24. [Epub ahead of print]
BOLD correlates of EEG topography reveal rapid resting-state network dynamics.
Britz J, van de Ville D, Michel CM.

EEGとfMRIの同時測定ネタ。
ICAによって分離したネットワークと脳波の相関を探したところ、音韻処理・視覚イメージ・注意の再定位・自律神経系処理のネットワークとの関連が認められたらしい。

2010-03-09

青年期における社会脳の発達と排斥による情動反応

Brain Cogn. 2010 Feb;72(1):134-45. Epub 2009 Jul 22.
Social brain development and the affective consequences of ostracism in adolescence.
Sebastian C, Viding E, Williams KD, Blakemore SJ.

脳機能は測定していないけど、序が非常によくまとまっている模様。
成人よりも青年期の方がサイバーボール課題における排斥における情動反応はやっぱり強いみたい。

2010-03-08

線条体の予測誤差は皮質間結合を調節する

J Neurosci. 2010 Mar 3;30(9):3210-9.
Striatal prediction error modulates cortical coupling.
den Ouden HE, Daunizeau J, Roiser J, Friston KJ, Stephan KE.

Friston御大の名がはいっている。
非線形DCMを用いて、線条体の予測誤差が皮質間結合に影響を及ぼしていることを示した知見。
線条体が予測誤差に関与することはいろいろ指摘されてきたけど、それが学習に関連した皮質の活動や結合性に影響を及ぼしていることを示した知見は初めてな気がする。

2010-03-04

皮質の解剖学的ネットワークにおける年齢及び性による差異

J Neurosci. 2009 Dec 16;29(50):15684-93.
Age- and gender-related differences in the cortical anatomical network.
Gong G, Rosa-Neto P, Carbonell F, Chen ZJ, He Y, Evans AC.

グラフ理論から発展したスモールワールド性などの指標に対する年齢及び性の影響を調べた論文。
女性の方が全体的な皮質結合性が高く、ローカルにも全体的にも効率的なネットワークを形成しているとの結果がでてる。
俗説に安易に利用されてしまいかねない研究。

2010-03-03

青年期におけるリスキーな意志決定

Neuroimage. 2010 Feb 23. [Epub ahead of print]
Adolescent risky decision-making: Neurocognitive development of reward and control regions.
Van Leijenhorst L, Gunther Moor B, Op de Macks ZA, Rombouts SA, Westenberg PM, Crone EA.

青年期では、リスキーな選択にはVMPFCが、非リスキーな選択にはLPFCが関連していた。
ACCの活動は成長に従って減少。
腹側線条体の活動は青年期をピークとする逆U字曲線を描いた。
青年期におけるリスキーな行動は、報酬系と制御系のアンバランスが原因とする仮説を支持したといえそう。

私はこの人を好きか?

Neuroimage. 2010 Feb 23. [Epub ahead of print]
'Do I like this person?' A network analysis of midline cortex during a social preference task.
Chen AC, Welsh RC, Liberzon I, Taylor SF.

内側皮質領域(MPFCとPCC)と課題関連ネットワーク(SMAとdACCと感覚運動皮質)が社会的選好課題に関連していて、それらの結合性が好き嫌いの関数として変化していたと報告。

Love hurts

Neuroimage. 2010 Feb 23. [Epub ahead of print]
Love hurts: An fMRI study.
Cheng Y, Chen C, Lin CP, Chou KH, Decety J.

自分、恋人、見知らぬ他者の視点で痛みを感じるシチュエーションを提示されると、それぞれACCが賦活するが、その程度は自分&恋人>見知らぬ他者となる。
痛みの共感における感受性は他者と自分との関係性によって異なる模様。

2010-03-02

情報統合カテゴリー学習における金銭的報酬と認知的フィードバックの神経機序の比較

J Neurosci. 2010 Jan 6;30(1):47-55.
Comparing the neural basis of monetary reward and cognitive feedback during information-integration category learning.
Daniel R, Pollmann S.

アブストだけではタスクがよくわからんけど、
側坐核は特定の報酬の正の動因に対して反応するらしい。